上山隆大『アカデミック・キャピタリズムを超えて―アメリカの大学と科学研究の現在』(NTT出版)
谷崎のあとに谷崎なく、太宰のあとに太宰なし。何物にも似ていないことが卓越性の証明になるのであれば、少なくとも私にとって『アカデミック・キャピタリズムを超えて』は一つの達成だ。寡聞にして、私はこれに似た議論を目にしたことがない。
この本を読むと自分がいかに固定観念の虜囚だったかということに(多かれ少なかれ)気づかされる。例えば、そう、「象牙の塔」という言葉をきのうまでのように無自覚に使うことはもうできない。大学は私たちが思っているより遥かに複雑で、御した難い生き物のような存在なのかもしれない。
ところで、すごいすごいと聞いてはいたが、ここに書かれたアメリカの大学の資産運用は本当にすごい。
日本の大学経営は一括採用とジョブローテーションという日本的雇用の中でこれからも頑張っていくしかないと私は思ってきたが、このレベルの資産運用やファンドレイジングを異動してきたジェネラリストがまっとうすることは到底不可能だ。
オススメ度:★★★★☆
アカデミック・キャピタリズムを超えて アメリカの大学と科学研究の現在
- 作者: 上山隆大
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2010/06/24
- メディア: 単行本
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